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わかりやすい超高温材料

東京工業大学名誉教授 田中良平

超高温材料とは?

 超高温材料は、およそ1000℃以上の高い温度で酸化や腐食、あるいは大きな力にも耐える材料である。その主な用途は図1に示す四つに大きく分けられる。

4つの用途
(図1)

 航空・宇宙分野に例をとれば、高度約1万mの空を時速800 km 以上の高速で飛ぶジェット機のエンジンの心臓部には燃焼器、静翼、動翼などがあり、離陸・上昇時の燃焼ガス温度は1500℃を超える。それらの部品は、高温の酸化や腐食に耐えるとともに、高速回転による大きな遠心力や振動を受ける動翼では変形や破壊を起こさないような高温強度に優れた材料が必要不可欠である。スペースシャトルや、それを打ち上げるロケット部品は、さらに高い温度にさらされ、よりきびしい高温環境に耐える材料が必要である。

環境・エネルギーと超高温材料

 二酸化炭素などの温暖化ガスの排出抑制は全世界的な大きな課題になっている。日本の二酸化炭素排出量のおよそ3分の1は火力発電に原因しているが、原子力や自然エネルギーによる発電が電力需要に対して十分な規模となるまでには、まだかなりの時間がかかると考えられるため、火力発電は引き続き主要な発電設備としての役割を果たすものと予想される。そこで、火力発電の熱効率をできるだけ高め、同じ電力量でも二酸化炭素排出量が少なく、化石燃料の消費も少なくて済むような技術開発が強く求められる。その解決手段のひとつは、ガスタービンから排出される燃焼ガスの顕熱で高温高圧の水蒸気を発生させて蒸気タービンを駆動し、ガスタービンと蒸気タービンの両方で発電する“複合サイクル発電”であり、熱効率のうえでもっとも優れている。その熱効率は、図2に見られるように、ガスタービンの入口温度が高くなるほど大きくなる。

複合サイクル発電の効率
(図2)

 このような高温用の機器・部品には、従来から金属系の材料が用いられてきた。図3では、上記のような“耐酸化・耐食性”と“高温強度”の両方にそれぞれ特定の指標を設けて、いろいろな金属材料がどの程度の温度まで使用できるかという“耐用温度”を比較している。白金 (Pt) は、高温でも耐食性に優れているが強度は劣る。Mo,Nb,Wなどは融点が高く、高温強度の点では優れているが、耐食性の観点からはせいぜい500℃程度までしか使えない。耐酸化・耐食性と高温強度の両面からもっともバランスのとれた材料と言えば、ニッケル (Ni) 合金とコバルト (Co) 合金である。ただし、NiもCoも純金属のままでは耐熱性は乏しく、いろいろな合金元素を組み合わせ添加する合金設計と、望ましい組織を作り込む製造方法も含めた長年にわたる合金開発が行われ、耐酸化・耐食性と高温強度の両方でバランスの取れた1000℃程度の耐用温度を備えるまでに発展している。

各種金属材料の比較
(図3)

 ガスタービンでもっとも多く使われている材料は、このNiを主成分とする耐熱超合金(Ni基超合金)である。しかしNi基超合金も1000℃では軟化が始まり、1400℃では溶融してしまう。このNi基超合金を1000℃以上で使うには、空気や水蒸気で部品を冷却しなければならないが、冷却すれば熱効率の向上には限界がある。図2に見られるように、冷却しないですむ材料が使えれば、同じ運転温度でも1割程度は熱効率が大きくなる。

 温暖化ガス排出の抑制には、従来のNi基超合金よりも耐熱性に優れ、冷却せずに使える、あるいは冷却を最小化できる“超高温材料”が大きな役割を果たすはずである。

当社における超高温材料の研究開発例

 超高温材料の歴史はまだごく浅い。図4には、その超高温材料として有望な材料群を分類して示した。これらの中には少数ながらすでに実用されている例もあるが、大部分は開発の途上にあると言わざるを得ない。

超高温材料の材料群
(図4)

 超高温材料の一つとして、当社では1990年代の半ばからNb基超合金を取り上げ、応力137 MPa - 1万時間クリープ破断基準の耐用温度が約1380℃に相当する合金を開発し、続いてその耐酸化・耐食性を確保するためのコーティング技術の研究を進めている。
 炭化ケイ素や窒化ケイ素も有力な超高温材料ではあるが、靱性が十分ではない。これらのセラミックスの破壊に対する信頼性を高めるために、セラミック系の連続繊維を用いたCFCCが注目されている。しかし、このCFCCも水蒸気を含む高温高圧の燃焼ガス中では必ずしも安定ではない。そこで、CFCCに対する耐環境コーティング技術について大手企業との共同研究も行っている。

 

 また過去にはC/Cコンポジットの耐酸化コーティングの研究も行って成果を挙げた。

超高温材料の研究開発における問題点

 1000℃以上で使用可能な超高温材料は、当然のことながら融点は1000℃より少なくとも数百℃は高く、ときには2000℃を超える。そのような融点の高い材料の製造プロセスには、従来材料とは異なった手法が必要となる場合も多く、もの作りには新たな設備やノウハウを構築することが重要である。
 また試験・評価の点でも、必要な高温を得る手段、測温方法、試験片の形状・寸法や試験の方法、とくに曲げや圧縮などの試験ではジグ材料の問題、さらには実環境をどこまで再現できるか、試験結果が設計にどこまで使えるか、等々の厄介な問題がある。
 要求される使用温度や環境が厳しくなるほど、研究開発の困難さは加速度的に増加する。

当社設備の応用は超高温材料に限らない

 当社の設備は、主として超高温材料を対象として整備されたが、それら設備の利用は、必ずしも“超高温材料”に限定されるわけではない。これまでに当社が実施した、あるいは現在も進めつつある研究開発の例として、ナノ結晶制御による高強度金属、熱電材料、トライボ材料などが挙げられる。このように、当社の設備は、もの作りから、基礎的な物性や各種実用特性の評価をはじめ、多彩な用途に対応することができる。

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